読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

竹野雅人「山田さん日記」感想

山田さん日記 (福武文庫)

山田さん日記 (福武文庫)

あらすじ

進学校にかよっていた「ぼく」は学校をサボった日、山田さん日記というゲームを手に入れる。そのゲームは、山田さんの日常が淡々と繰り返されるだけで、いつまでたっても冒険に進まないものだった。業を煮やした「ぼく」は次第に山田さんに反抗的な行動を取らせるようになるが……。

感想

「山田さん日記」は1988年2月に発表された小説。ファミコンが発売されたのが1983年7月なので、それからおよそ5年後のものだ。
「山田さん日記」はロールプレイングにもかかわらず、ファンタジー的なものが何も起こらない。
学校→バイト→家の繰り返しで、進んでいく。
まるで現実そっくりに形成されたゲーム。
「ぼく」はプレイしていくうちに、現実がゲームのように思えてくる。

「うるせい!」それに従順に応えてしまったのか、そのぼくを煽るゲームの中のぼく自身に腹立たしくなってしまったのか、ぼくはついに込み上げるものを吐き出した。(略)
 おいおい、何てことを言っているんだ、と慌てているぼく自身とは裏腹に、啖呵を切るならもう少し威勢がほしいなあ、コントロールレバーを持ったぼくが、そんなのんきな事を言ってのけたような気がした。p52『山田さん日記』

 現実がゲームのように感じられる、というのはゲームに熱中したことがある人なら一度は感じたことがあるかもしれない。
 時代が時代だから「山田さん日記」はドット絵だけど、いまではグラフィックがかなり進化した。近年で仮想空間のVRゲームも出てくるようになった。
 ゲームという虚構のリアリティにはまってしまう人間を描くという意味では、かなり先行的な作品のように思う。
 作中で扱っているのがドット絵のゲームということで、古びた作品のようにも思えるがゲーマーなら、なかなか楽しめる。